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8、1月1日、雪。
僕は大晦日に願った…。もう一年…いや、半年。
彼女と出会ったあの季節まで彼女がその命を輝かせてくれるように…と。
1月1日、元旦。早苗は正月を病院で過ごした。
経過は安定していると担当医師は言っていたが、僕は不安だった。
確かに医師の言うように、呼吸器を必要とするのは少し動いた後だけで
普段は呼吸器なしでもなんとか生活できる状態。
しかし、最近の早苗はずっと外を見て悲しそうな顔をしている。
僕には踏み込めない何かがある、それは感じている。
だけど、そこに踏み込んでいかなければいけない時期でもあった。
時間がない…僕は焦っていた…。僕は早苗の手を握りながらそっと聞いてみた。
「最近、何だか外ばかり見てるね。何かあったの?」
「桜の木…」
「え?桜の木?」
「うん、桜の木」
「それがどうしたの?」
「…あの桜の木が花びらで一杯になること、見たいなぁって。」
僕は少し気になった。いつもの癖が出たからだ。でもいつもと違う。
ただ頑固な癖ではなく憂いを秘めた…とでも言えばいいだろうか?
言いたいけど言えない、そんな感じがした。
僕は早苗の決意を尊重した。苦渋の決断だった。
今、聞かなければもう聞くことはできない。
僕は、僕が今聞いた、という事実が
彼女に何かの変化を与えるのであればそれでいい、と思うようにした。
「そうだね、電飾で着飾った桜の木も良かったけど
やっぱ桜には桃色の花びら、だよね。」
「うん、早くみたいな。満開の桜の木。」
「じゃあ、春になったら一緒にあの木の下で花見をしよう。」
僕はその約束が彼女をまた別の季節に連れて行ってくれることを願った。
そしてその季節が来たらまた別の季節へ約束をする。
そうして僕達は一生同じ時を生きてゆければ…そう願った。
「そうね…生きていれば、そうしたいね。」
「何言ってんだよ、約束は守るもの、そうでしょ?じゃあ…はい!」
僕は早苗にそう言って、小指を突き出した。
ああ、と早苗も同じように小指を差し出す。
「ゆ~びき~り、げ~んま~ん、う~そつ~いた~ら………」
僕はストップを左手で合図した。早苗の不思議がる顔もまた可愛かった。
「早苗、何にしよっか?」
「え?何が?」
「普通だと面白くないでしょ?針千本飲~ます、じゃあ面白くないでしょ?」
早苗の顔が少し明るくなった。僕はそれが嬉しかった。
「う~ん、じゃあ…そうだな~、お姫様だっこで花見…にしよっかな。」
「それじゃあ、どっちにしろ花見になるじゃん。」
早苗はフフっと笑うだけだった。
「ああ…ああ、それでいいよ、僕も言ってみたものの良いの浮かばなかったし。」
じゃあ、と二人で呼吸を合わせた。彼女の呼吸に僕の呼吸を重ねる。
それは同じ時間を生きていてもなかなか起こらないことだった。
「ゆ~びき~り、げ~んま~ん、う~そつ~いた~ら
お姫様だっこ~では~なみ!!指切った!」
フフフ、と二人で笑った。
あはは、と笑えた日々を懐かしく思いつつ
僕達は久しぶりに同じ笑顔で…同じ時間を…同じ呼吸で過ごした。
思い出というものは、失った時初めてその効果を発揮する。
無くなったもの、すでに置いてきてしまったもの…失ったもの。
思い出を投影するには、振り返る、ということが必要であり
僕は今後、その苦しさに耐えることができるのだろうか…。
僕は大晦日に願った…。もう一年…いや、半年。
彼女と出会ったあの季節まで彼女がその命を輝かせてくれるように…と。
1月1日、元旦。早苗は正月を病院で過ごした。
経過は安定していると担当医師は言っていたが、僕は不安だった。
確かに医師の言うように、呼吸器を必要とするのは少し動いた後だけで
普段は呼吸器なしでもなんとか生活できる状態。
しかし、最近の早苗はずっと外を見て悲しそうな顔をしている。
僕には踏み込めない何かがある、それは感じている。
だけど、そこに踏み込んでいかなければいけない時期でもあった。
時間がない…僕は焦っていた…。僕は早苗の手を握りながらそっと聞いてみた。
「最近、何だか外ばかり見てるね。何かあったの?」
「桜の木…」
「え?桜の木?」
「うん、桜の木」
「それがどうしたの?」
「…あの桜の木が花びらで一杯になること、見たいなぁって。」
僕は少し気になった。いつもの癖が出たからだ。でもいつもと違う。
ただ頑固な癖ではなく憂いを秘めた…とでも言えばいいだろうか?
言いたいけど言えない、そんな感じがした。
僕は早苗の決意を尊重した。苦渋の決断だった。
今、聞かなければもう聞くことはできない。
僕は、僕が今聞いた、という事実が
彼女に何かの変化を与えるのであればそれでいい、と思うようにした。
「そうだね、電飾で着飾った桜の木も良かったけど
やっぱ桜には桃色の花びら、だよね。」
「うん、早くみたいな。満開の桜の木。」
「じゃあ、春になったら一緒にあの木の下で花見をしよう。」
僕はその約束が彼女をまた別の季節に連れて行ってくれることを願った。
そしてその季節が来たらまた別の季節へ約束をする。
そうして僕達は一生同じ時を生きてゆければ…そう願った。
「そうね…生きていれば、そうしたいね。」
「何言ってんだよ、約束は守るもの、そうでしょ?じゃあ…はい!」
僕は早苗にそう言って、小指を突き出した。
ああ、と早苗も同じように小指を差し出す。
「ゆ~びき~り、げ~んま~ん、う~そつ~いた~ら………」
僕はストップを左手で合図した。早苗の不思議がる顔もまた可愛かった。
「早苗、何にしよっか?」
「え?何が?」
「普通だと面白くないでしょ?針千本飲~ます、じゃあ面白くないでしょ?」
早苗の顔が少し明るくなった。僕はそれが嬉しかった。
「う~ん、じゃあ…そうだな~、お姫様だっこで花見…にしよっかな。」
「それじゃあ、どっちにしろ花見になるじゃん。」
早苗はフフっと笑うだけだった。
「ああ…ああ、それでいいよ、僕も言ってみたものの良いの浮かばなかったし。」
じゃあ、と二人で呼吸を合わせた。彼女の呼吸に僕の呼吸を重ねる。
それは同じ時間を生きていてもなかなか起こらないことだった。
「ゆ~びき~り、げ~んま~ん、う~そつ~いた~ら
お姫様だっこ~では~なみ!!指切った!」
フフフ、と二人で笑った。
あはは、と笑えた日々を懐かしく思いつつ
僕達は久しぶりに同じ笑顔で…同じ時間を…同じ呼吸で過ごした。
思い出というものは、失った時初めてその効果を発揮する。
無くなったもの、すでに置いてきてしまったもの…失ったもの。
思い出を投影するには、振り返る、ということが必要であり
僕は今後、その苦しさに耐えることができるのだろうか…。
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