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10、3月10日、雨、所により快晴。
3月4日、桜の木の下で僕は歌った。
最後の歌…最高の愛のうたを、集中治療室にいる彼女に届くように僕は歌い続けた。
時間は覚えていない、どれだけ歌ったかなんてのも覚えていないけど
弦が弾けて切れた瞬間、僕はすべての終わりを感じ取った。
そして…僕は見たんだ…桜の木に刻まれた相合傘を…。
刻まれ、無くした記憶の断片が繋がり、早苗の全てを僕は知った。
「ようやく会えた…そうか…君だったんだね。
ようやく僕はたどり着いたよ…ただいま…早苗…。」
まだ蕾を付け出したばかりの桜の木が僕の記憶の中で花を咲かせ
白いワンピースの女の子を暖かく見守っていた。
そしてその隣にはおじいちゃんから借りたステンレスのピックケースで
相合傘を必死に作る小さな少年が居た。
「さなえ↑ゆうじ」
そしてその少女は車椅子で近づいてくるおばあさんに抱きついて
少年に手を振った。
「じゃあ、また明日ね!」
「うん、じゃあ、また明日!」
覚えているのは、その後、彼女に少年は会うことはなく
少年のおばあさんはその日に亡くなった…ということだけだ。
彼女のおばあさんもまた、この世を去って
少年とはもう会えないと悟ったのだろうか?
少年はその後、一度だけその場所を訪れた。
その時に彼女はもう居なかったのだ。
10日の雨の予報は外れ、僕は春の日差しを受けながら
病院へ最後の訪問を行う予定だった。
その前に僕は寄らなければならない場所があった。
あの道…あの自動販売機…そしてあの景色…夕焼け…。
僕はただ立ち尽くしてその場所の全てを目に焼き付けた。
もう…ここでは歌えない…いや…歌わない。
それはここが彼女と僕の二人の場所だったから。
そしてあの夕焼けもこの後、昇る月も君がくれた宝物だから。
日が沈む前に僕は何とか全てを焼き付け、病院へたどり着けた。
彼女と歩いた廊下…一緒に泣いたベッド…
クリスマスイルミネーションを完成させた中庭…。
「そんな…そんな…」
月夜に照らされていたのは、蕾を付け出た桜ではなく
すでに満開に咲き誇る桜の木だった。
僕は幻覚を見ているかのような感覚を捨て去るように桜の木に手を当てた。
「幻じゃない…咲いてる…桜は今…今咲いたよ…早苗…」
僕はあの日、早苗が亡くなった日に溜め込んだ涙の
その全てをこの桜の木に捧げた。
「君が咲かせたのか?僕に見せてくれたのか…?」
ふとその時、早苗の病室からは裏手、桜の木の裏に何かが書かれているのが見えた。
「早苗↑雄二」
それがいつ書かれたものなのか、僕にはわからない。
僕にわかるのは誰が、どういう想いでそれを書いたか、ということだけだった…。
桜は二つの誓いをその胸に刻み花を咲かせ
その真上では月が、満月が僕を…
ひとり残された僕をただ優しく照らしているだけだった。
3月4日、桜の木の下で僕は歌った。
最後の歌…最高の愛のうたを、集中治療室にいる彼女に届くように僕は歌い続けた。
時間は覚えていない、どれだけ歌ったかなんてのも覚えていないけど
弦が弾けて切れた瞬間、僕はすべての終わりを感じ取った。
そして…僕は見たんだ…桜の木に刻まれた相合傘を…。
刻まれ、無くした記憶の断片が繋がり、早苗の全てを僕は知った。
「ようやく会えた…そうか…君だったんだね。
ようやく僕はたどり着いたよ…ただいま…早苗…。」
まだ蕾を付け出したばかりの桜の木が僕の記憶の中で花を咲かせ
白いワンピースの女の子を暖かく見守っていた。
そしてその隣にはおじいちゃんから借りたステンレスのピックケースで
相合傘を必死に作る小さな少年が居た。
「さなえ↑ゆうじ」
そしてその少女は車椅子で近づいてくるおばあさんに抱きついて
少年に手を振った。
「じゃあ、また明日ね!」
「うん、じゃあ、また明日!」
覚えているのは、その後、彼女に少年は会うことはなく
少年のおばあさんはその日に亡くなった…ということだけだ。
彼女のおばあさんもまた、この世を去って
少年とはもう会えないと悟ったのだろうか?
少年はその後、一度だけその場所を訪れた。
その時に彼女はもう居なかったのだ。
10日の雨の予報は外れ、僕は春の日差しを受けながら
病院へ最後の訪問を行う予定だった。
その前に僕は寄らなければならない場所があった。
あの道…あの自動販売機…そしてあの景色…夕焼け…。
僕はただ立ち尽くしてその場所の全てを目に焼き付けた。
もう…ここでは歌えない…いや…歌わない。
それはここが彼女と僕の二人の場所だったから。
そしてあの夕焼けもこの後、昇る月も君がくれた宝物だから。
日が沈む前に僕は何とか全てを焼き付け、病院へたどり着けた。
彼女と歩いた廊下…一緒に泣いたベッド…
クリスマスイルミネーションを完成させた中庭…。
「そんな…そんな…」
月夜に照らされていたのは、蕾を付け出た桜ではなく
すでに満開に咲き誇る桜の木だった。
僕は幻覚を見ているかのような感覚を捨て去るように桜の木に手を当てた。
「幻じゃない…咲いてる…桜は今…今咲いたよ…早苗…」
僕はあの日、早苗が亡くなった日に溜め込んだ涙の
その全てをこの桜の木に捧げた。
「君が咲かせたのか?僕に見せてくれたのか…?」
ふとその時、早苗の病室からは裏手、桜の木の裏に何かが書かれているのが見えた。
「早苗↑雄二」
それがいつ書かれたものなのか、僕にはわからない。
僕にわかるのは誰が、どういう想いでそれを書いたか、ということだけだった…。
桜は二つの誓いをその胸に刻み花を咲かせ
その真上では月が、満月が僕を…
ひとり残された僕をただ優しく照らしているだけだった。
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