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剛蔵の空想履歴、創作小説の部屋へようこそ!!リンクはフリーです。
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9、2月6日、晴れ時々曇り。


1月の終わりあたりから、早苗の体は確実にその力を失い
呼吸器が必要となる機会が増えた。
必然的に僕達は話をする状況になく
ただ手を握り合うことしか出来ない日が2日以上、続くこともあった。


2月に入ってから、少し落ち着いたように見えた早苗が僕に提案した。


「ねぇ…歌は…もう歌わないの?」


僕は早苗が今の状態になってから歌うことをしなくなっていた。
というよりギター弦の共振や歌、といった
音の振動が早苗の心臓に悪影響を与える恐れがある、と医師に注意されたからだ。


「ああ、あまり身体に障るといけないから。」

「…歌がないほうが、身体に悪い…んだけどね…ダメ?」


僕は迷った…早苗がもし、明日
逝ってしまうことがあれば僕は最後は歌っていたい。
彼女の永遠の眠りを、避けられない運命の門出を
彼女が愛した歌で送ってあげたい。そう思っていた。

でも、それが彼女の寿命を縮めることになれば
僕は今後、歌うことを辞めてしまうだろう。
しかしそれを早苗は許してはくれないだろう。
僕は人生で最大の選択肢に挑戦している最中だった。


「ん…実は迷ってる。正直に話すから落ち着いて聞いて。
お医者さんからは止められてる。
僕が歌うことで早苗の寿命を縮めてしまう可能性があるから。
できるだけ興奮させるなって。
でも僕は早苗の命に、その希望が持てるよう歌いたいとも思ってて…。
だから僕には決められない。早苗が決めて。歌ったほうがいい?」


早苗は複雑な表情を浮かべて、静かに言った。


「歌が無ければ…出会わなかったのよ、私達…
その大切な歌で…私の命がなくなることはないの…安心して歌ってほしいな。」


早苗の頬を一粒の涙が伝って、ぽたりと握った手に落ちた。


「…わかったよ、僕は歌う…誰が反対しても…僕はここで…君に歌を聞かせる…。」


僕は涙を堪えることに必死だった。僕が今、泣いてはいけない。
僕は笑って歌って彼女に希望を見せなければいけない。


僕はいつでも笑って明るくいるべきなのだと
僕は自分の使命にひとつの項目を付け加える。


命尽きる最後まで…早苗を包む歌を…暖かく笑顔で歌い続ける…と。


歌は人を勇気づけたり、励ましたりできると僕は思っていた。
でも、それは実際そういった場面で歌を歌うと違うのだ
ということに気付かされてしまう。

歌は人を勇気付ける…のではなく
歌を歌う人とその歌を聞く人との間に生まれる何か…
心が共鳴し繋がる部分が、聞き手だけでなく歌い手も包んでいく。

その間には希望も絶望もなく、弱者も強者もなく
ただそこで歌で繋がっている、という感覚。
それがその人の今、足りないものに変わるだけなのだ、と
僕は今は確信を持って言える。


君が教えてくれたこと…君が君の命で教えてくれたことは…
僕の中で永遠に生きているよ…。

僕は歌い続けた…君の命を消さないように…と。


僕は歌い続けた…。あの日を迎えても僕は歌い続けたよ…早苗…。





  生まれ変わっても


誰かの何かの意見を 自分の心に投げてみる
きっとそのまま受け入れて 一番だと思う人も居る
誰かの何かの思想に 自分の思想を重ねてみる
きっとそのまま寄り添って 叶えたいと願う人も居る

生まれ変わっても君に会いたい
死んでしまっても次があるよって でもそんなこと信じていいの?

生まれ変わったら別の人でもいいかと 思えるくらいに君と生きてみたい
きっとこの世が終わるとき あれやこれやと後悔するけど
生まれ変わったら別の人でもいいかと 思えるくらいに君と生きてみたい
きっとこの世が終わるとき きっと笑顔で瞳閉じれるさ

また会いたいって
その時、本当に言えそうな気がするんだ


生まれ変わったら別の人でもいいかと 思えるくらいに君と生きてみたい
きっと人生振り返って あれやこれやと矛盾抱えるけど
生まれ変わったら別の人でもいいかと 思えるくらいに君と生きてみたい
きっとこの世が終わるとき あれやこれやと後悔するけど

また会いたいって
その時、無駄なく言えそうな気がするんだ

また会いたいって
その時、心から言えそうな気がするんだ

君に。

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第1弾…月と君~完結~
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