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7、12月24日、雪
早苗の病状はこの1ヶ月、安定しつつも徐々に進行を始めていた。
最初は特に問題なかった。
ところが、3週間も経つとその状態があらわになる。
少し歩くと息が切れ、自分ひとりでは歩くのが辛くなった。
「ほんっとに…やわな身体に…育ったもの…ね。」
と、最初は皮肉って笑ったけど、12月の中頃から、その笑顔にも陰りが見え始めた。
10日前、僕は決意した。早苗に最高のクリスマスプレゼントを用意しよう。
来年はないかも知れない。そう思って医師に相談した。
医師は彼女の病状を案じ乗り気ではなかったけれど
周りの看護師さんがかなり乗り気で僕の意見を医院長に通してくれた。
…そして今日、早苗に内緒でそのプレゼント大作戦が始まる…。
「じゃあ、準備はいいですね。
あれも、これも揃ったし…周りも準備OKかな?
後はやるだけか…。うまくいくかな?」
僕は早苗のお父さんに目で合図を送った。
「そうだね、じゃあ、私は病室で合図を待つよ。」
僕は早苗の部屋のカーテンが閉まるのを待っていた。
カーテンが閉まったのはそれからすぐ後のことだった。
「(さぁ、始めましょうか!!)」
僕は皆に合図を送った。勿論、早苗の病室には届かないくらいの声で。
どれだけ時間が経っただろう。準備は無事、終了した。
そして僕は早苗の病室でその時を今か今かと待った。
「ふたりとも、何をそわそわしてるの?」
見るに見かねて早苗が話しかけてきた。
「いやぁ、別にぃー。今日は冷えるねぇー。雪も降っているようだし。」
「ほんとに?雪が降ってるならなんでカーテン閉めてるの?私、雪が見たい。」
お父さんと僕は同時に時計を見た。
「きた!」
二人同時に呟いていた…。
12月24日、夜7時。外は雪。ホワイトクリスマス・イヴ。
人生で一番の思い出と温かな涙を心に刻む日。
時間と共に、二人でカーテンを開けた。窓を少し開け、僕は叫ぶ。
「オッケーですよ~!!やちゃって下さーい!!!」
ぱっと中庭に明かりが灯り
あの桜の木のすぐ側の小さな針葉樹を中心に
ライトアップされたイルミネーションがキラキラと輝きを放った。
降る雪がまたその輝きに色を添え、中庭が別世界に姿を変えた。
あのおじいさんも渡り廊下で見ていた。
桜の木にも少し電飾を施していたので、それが嬉しかったのか
あのおじいさんの顔も少しほころんで見えた。
「もみの木は用意出来なかったけど、あの桜の木があって助かったよ。
ちょっと雰囲気は違うかも知れないけど、メリークリスマス、早苗。」
僕はそういって早苗の表情を伺った。
「…これって…何?」
早苗の頬を大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
暖かく命に溢れた涙だった。
僕は涙を堪えながら早苗の肩を抱くようにして言った。
「…泣くなよ、また発作が…起きたら…どうするん…だよ…」
「だって…だっ…て…」
僕は早苗の肩を抱き、早苗の父さんは早苗の母さんを抱き
渡り廊下では僕の父さんが母さんを抱き、皆同じ感触の涙を流した。
「来年も…こうして祝ってやるからな。来年もこうして…」
触れた肌や髪の感触は上書きされていく。
その涙もまた上書きされていく。
それに気付いてからでは遅い。
そう…わかっている。
でも今はこれでいい。今はこれでいいのだと、そう心から思えた。
そんな一日だった。
早苗の病状はこの1ヶ月、安定しつつも徐々に進行を始めていた。
最初は特に問題なかった。
ところが、3週間も経つとその状態があらわになる。
少し歩くと息が切れ、自分ひとりでは歩くのが辛くなった。
「ほんっとに…やわな身体に…育ったもの…ね。」
と、最初は皮肉って笑ったけど、12月の中頃から、その笑顔にも陰りが見え始めた。
10日前、僕は決意した。早苗に最高のクリスマスプレゼントを用意しよう。
来年はないかも知れない。そう思って医師に相談した。
医師は彼女の病状を案じ乗り気ではなかったけれど
周りの看護師さんがかなり乗り気で僕の意見を医院長に通してくれた。
…そして今日、早苗に内緒でそのプレゼント大作戦が始まる…。
「じゃあ、準備はいいですね。
あれも、これも揃ったし…周りも準備OKかな?
後はやるだけか…。うまくいくかな?」
僕は早苗のお父さんに目で合図を送った。
「そうだね、じゃあ、私は病室で合図を待つよ。」
僕は早苗の部屋のカーテンが閉まるのを待っていた。
カーテンが閉まったのはそれからすぐ後のことだった。
「(さぁ、始めましょうか!!)」
僕は皆に合図を送った。勿論、早苗の病室には届かないくらいの声で。
どれだけ時間が経っただろう。準備は無事、終了した。
そして僕は早苗の病室でその時を今か今かと待った。
「ふたりとも、何をそわそわしてるの?」
見るに見かねて早苗が話しかけてきた。
「いやぁ、別にぃー。今日は冷えるねぇー。雪も降っているようだし。」
「ほんとに?雪が降ってるならなんでカーテン閉めてるの?私、雪が見たい。」
お父さんと僕は同時に時計を見た。
「きた!」
二人同時に呟いていた…。
12月24日、夜7時。外は雪。ホワイトクリスマス・イヴ。
人生で一番の思い出と温かな涙を心に刻む日。
時間と共に、二人でカーテンを開けた。窓を少し開け、僕は叫ぶ。
「オッケーですよ~!!やちゃって下さーい!!!」
ぱっと中庭に明かりが灯り
あの桜の木のすぐ側の小さな針葉樹を中心に
ライトアップされたイルミネーションがキラキラと輝きを放った。
降る雪がまたその輝きに色を添え、中庭が別世界に姿を変えた。
あのおじいさんも渡り廊下で見ていた。
桜の木にも少し電飾を施していたので、それが嬉しかったのか
あのおじいさんの顔も少しほころんで見えた。
「もみの木は用意出来なかったけど、あの桜の木があって助かったよ。
ちょっと雰囲気は違うかも知れないけど、メリークリスマス、早苗。」
僕はそういって早苗の表情を伺った。
「…これって…何?」
早苗の頬を大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
暖かく命に溢れた涙だった。
僕は涙を堪えながら早苗の肩を抱くようにして言った。
「…泣くなよ、また発作が…起きたら…どうするん…だよ…」
「だって…だっ…て…」
僕は早苗の肩を抱き、早苗の父さんは早苗の母さんを抱き
渡り廊下では僕の父さんが母さんを抱き、皆同じ感触の涙を流した。
「来年も…こうして祝ってやるからな。来年もこうして…」
触れた肌や髪の感触は上書きされていく。
その涙もまた上書きされていく。
それに気付いてからでは遅い。
そう…わかっている。
でも今はこれでいい。今はこれでいいのだと、そう心から思えた。
そんな一日だった。
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